鳶職人の仕事には常に危険が伴います。高所での仕事は自分が落下して大怪我をしてしまう恐れがあるだけでなく、他の人に被害を与えてしまう可能性も大きいです。
そのため、そのような最悪な状況を作り出すことがないように、鳶職人はいかなるときも、最大限に集中して作業にあたっています。安全確認を怠らず、工程を省かず、確実に作業を遂行するためには、緊張感を持って仕事に真剣に取り組まざるを得ません。
だからこそ、作業中の緊張感で鳶職人達は皆、顔の表情に厳しさや、凜々しさが生まれてきます。
それは例え若者であっても同じで、きりっとした目元や口元に漂うりりしさからは年齢以上の風格が感じられる人もいるほどです。危険と背中合わせの毎日で鍛え上げられた人格は、人生のあらゆる場面で発揮されることになるでしょう。

｢建設は鳶に始まり鳶に終わる｣という言葉にもあるように、あらゆる建設工事の開始に先駆け、その後の作業を進行させるための下準備を行う重要な責務を、鳶職人には共通して任されています。
例えば足場や鉄骨、重機などは、それぞれの鳶職人が設置して初めて大工が建設作業に入るものです。
もちろん鳶職人の仕事が不十分であれば、工事中に重大な事故を引き起こし、その後の作業が停止してしまう可能性もあります。だからこそ、それだけ責任も大きいし、鳶職人が自身の仕事に誇りを持つことのできる理由でもあるのです。
そして、足場や鉄骨、重機などは建物が完成した際に全て撤去されるため、目に見える形で鳶職人の仕事が残ることはありません。
しかし、完成した建造物を見たとき、鳶職人の胸には何にも代えがたい達成感や満足感を得ることができるといいます。